研究概要 |
1, 1995年10月から1998年10月にかけてCSDが疑われる患者の血清42検体,CSD以外の患者の血清169検体,健常者血清170検体について,間接蛍光抗体法によりBartonella henselaeに対するIgGおよびIgM抗体価を測定した。IgG抗体陽性率は,CSDが疑われる患者で38.0%(16/42),CSD以外の患者(169名)と健常者(170名)では6.5%(22/339)であった。IgM抗体陽性率は,CSDが疑われる患者で9.5%(4/42),CSD以外の患者と健常者では0.29%(1/339)で,CSDが疑われる患者における抗体陽性率は有意に高かった。 2, 1994年5月から1995年6月にかけて,神奈川県および埼玉県の7カ所の動物病院より採取した総計471検体の飼育猫の血清について,Bartonella henselaeならびにToxoplasma.gondiiの感染状況を検討した。調査した猫のうち,43頭(9.1%)がB.henselaeに対し,41頭(8.7%)がT.gondiiに対する抗体を保有していた。B.henselaeに対する雄猫の抗体陽性率は12.9%と雌猫の5.2%に比べ有意に高い値を示した(p<0.01)。一方,T.gondii抗体陽性率は雄猫の9.1%,雌猫の8.7%で有意な差は見られなかった。各病院ごとの猫のB.henselae抗体陽性率は0〜19.5%,T.gondii抗体陽性率は4.0〜18.8%であった。B.henselaeおよびT.gondii抗体陽性の猫は1歳以下〜14才までみられ,T.gondii抗体陽性率は年齢とともに上昇する傾向が見られた。無作為抽出した67頭の猫血清のうち,16頭がFIV抗体を6頭(8.9%)がFeLV抗原をそれぞれ保有していたが,これらとB.henselaeの陽性率との間に関連性は認められなかった。 3, 1997年10月〜1998年9月にかけて横浜の雑居ビルに生息するネズミ総計339匹を捕獲し,Bartonella属の分離を試みたが,すべて陰性であった。 4, わが国の猫から分離された株についてパルスフィールド電気泳動を行ったところ,わが国の猫は複数の株あるいは菌種に感染していることが判明した。
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