研究概要 |
1,わが国の6市(札幌市;北海道,仙台市;宮城県,上越市;新潟県,藤沢市;神奈川県,京都市;京都府,三田市;兵庫県),4郡(三島郡;大阪府,簸川郡;島根県,姶良郡;鹿児島県,島尻群;沖縄県)の10動物病院から,計690頭の猫血液を採取し,Bartonella属菌の分離を試みた。Bartonella属は全体で7.2%(50/690)の猫から分離されたが,札幌市,仙台市の猫からは分離されなかった。猫の感染率は上越市,三田市の2%から島尻郡の20%であった。わが国で初めてB.clarridgeiaeが島尻群の1頭の猫,京都市の2頭の猫ならびに三島郡の3頭の猫から分離された。多くの猫はB.henselaeあるいはB.clarridgeiaeのいずれか一方に感染していたが,三島郡の1頭のみ両菌種に感染していた。分離されたB.henselaeの16SrRNA型は,島尻郡から分離された1株のみがII型であった以外,全てI型であった。本研究により,日本のB.clarridgeiaeとB.henselae 16SrRNA型の分布が初めて明らかになった。 2,日本の猫から分離されたB.henselaeの6株(I6-1、NE2-3、MA17-1、NI13-1、G189-1、G204-1)と,アメリカの猫および人から分離された2株(U4,Houston-1)についてパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)を用いてゲノム解析を行うとともに,CSDを疑う患者血清28例,日本の飼育猫血清76例を用いて間接蛍光抗体法(IFA)ならびにウェスタンブロッティング(WB)により各分離株の抗原性の多様性を検討した。PFGEでは,すべての株が異なるゲノムプロフィールを示し,ゲノムDNAサイズは1.75〜2.13Mbpであった。CSD患者血清28例のIFA陽性率は各株で異なり,typeI株に対する抗体陽性率はtypeII株に比べ有意に高い値を示した(P<0.01)。また,患者血清は,すべての日本の猫分離株に対し,U4株より有意に高い陽性率を示した(P<0.05)。CSD患者血清を用いたWBでは,血清によって反応する抗原タンパク質が異なることが明らかになった。日本の猫分離株I6-1株に対する飼育猫血清76例のIFA抗体陽性率は,アメリカ分離株のHouston-1株に比べ有意に高い値を示した(P<0.05)。
|