これまでに入手した野鳥(水禽類)のサンプル(肝臓、腎臓)におけるカドミウム(cd)とバナジウム(V)、およびその他6種の重金属元素の含量をICP法により測定した。この結果、分析した元素間ではCd-Cr-Ti-Liの間に相関関係が認められたが、Vには他元素との相関は認められなかった。またCdについては海鳥の肝臓と腎臓の間で、Vについては都市近郊で採取された野鳥由来の肝臓と腎臓の間で強い相関関係が得られた。これらの成績は、11.研究発表に示した通り既に公表したか、あるいは現在投稿中である。なお、この疫学調査とサンプル収集は、現在も続行中である。 他方、リステリア菌を用いて、CdとVの毒性を検討する予定であったが、この菌は人獣共通感染症を起こさせるので、使用するCdとVの濃度を、大腸菌を使用してまず検討した。10^<-5>M以上のCd、10^<-3>M以上のVは菌の増殖を抑制した。そこで、これらの濃度以下のCdあるいはVを含むheart infusion broth中で継代培養した大腸菌からDNAを抽出して、予備泳動を行い良好な結果を得た。そこで、大腸菌については標準株としてE.C0li K-12を入手して現在DNAの抽出中である。リステリア菌では基礎研究として、iap領域に多型性を示す領域が存在することを明らかにした(現在投稿準備中である)。そこで、CdあるいはV添加培養液中で増殖させたリステリア菌由来の抽出DNAについての制限酵素切断解析、およびPCR法により増幅したiap遺伝子領域の塩基配列の決定等の予備実験を行っている。 また、培養細胞(Vero)に対する影響では、Vが10^<-6>M以上で増殖を抑制し、細胞形態にも変化を与えることが明らかになった。Vの細胞内への取り込み状況は、これまでの摘出臓器での成績と類似したものであったが、その反応速度は速く明瞭であった。これらの成績については、127回日本獣医学会で報告予定である。
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