前年に続いて重金属元素については、野鳥(水禽類)の肝臓と腎臓中のCdを含む8種類の重金属元素の含量をICP法により測定した。今回は、特に海ガモと淡水ガモに分けて比較した。この結果、海ガモではLi-Ti-Mo、Cd-Cr-Liの間の相関が腎臓で、Li-Cr-V、Li-Cr-Mo、Tl-Cd、Tl-Tiの間の相関が肝臓で見られた。これらの成績は淡水ガモの成績と類似しているが、VとMoについての成績は淡水ガモとは異なっていた。この成績は、第129回日本獣医学会で発表予定であり、現在、論文として投稿中である。 他方、リステリア感染症の疫学の基礎として環境中のL.monocytogenes(Lm)分布を検討するために、水禽類以外の野鳥も含む132羽の野鳥とタヌキを含む14匹の野生哺乳類の腸管から本菌の分離を試みた。この結果、哺乳類を含む7個体からリステリア属菌が分離されたが、Lmはドバト由来の1株のみであり、水禽類および哺乳類からは分離されなかった。この成績は、わが国の環境のリステリア属菌による汚染が、諸外国と同程度かやや低い可能性を示している。しかし、市販食肉における本菌の汚染は、約40%と高率であった(現在、投稿準備中)。従って現在、Lm感染症と直接的な関連が深いとされる飼育牛について、飼育環境等を含めて検討中である。 また、11.研究発表に示した印刷中の論文(前回投稿準備中)でiap領域についての検討を終了したため、現在、Cd、V等の重金属元素を含む培養液中でリステリア菌を培養してその影響を検討中である。
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