研究概要 |
野鳥(水禽類)の肝臓と腎臓中のCdを含む8種類の重金属元素の含量をICP法により測定し、汚染の度合いを多変量解析(主成分分析、順位付け等)した。この結果これまで同様、Cd、Cr、Li等の特定の元素間で相関が得られた(日本獣医師会雑誌53、2000)。また、検討した特定の元素汚染に関しては繁殖地による差が特に顕著であり、繁殖地の汚染が水禽類の臓器汚染と強く関連する可能性が示唆された。それらの成績のうちCdについては報告済み(Environ Monit Asses,2000印刷中)であり、Moについては現在投稿中である。また、8元素による汚染の度合いを総合した場合、淡水鳥が汚染の上位の殆どを占める結果となった(第131回日本獣医学会、発表予定)。以上の成績から、本研究で対象とした水禽類は、環境汚染のモニターとしての役割を担い得ることが示唆された。他方、マウスの摘出肝臓へのこれら重金属元素の取り込み状況の観察では、この相関と一致しない点が観察されたので、その差についてはさらに検討が必要と考えられる。 また、重金属元素の遺伝子への影響を検討するために、リステリア菌(L.m;iap遺伝子の塩基配列解析済み)を利用することを試みた。しかし、この過程で検体からの菌分離、分離菌株の血清型の決定等に問題のあることが判明した。そこで、本研究ではまずこの点を解決して、血清型の決定法では改良法(Sahumy法)を確立した(食品微生物学会報告、2000)。次に、血清型1/2bと4bのL.mを重金属元素(Cd、V、Sn)を含む培養液中で継代培養した。その5代目から染色体DNAを抽出して制限酵素切断解析を試みた結果、その泳動パターンの変化が観察され、我々が大腸菌で得ている成績とも類似していた。この成績から、これら重金属元素による遺伝子への影響が示唆されたので詳細を検討中である。
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