1)本研究では、まず、野鳥(水禽類)の肝臓と腎臓中のCdを含む8種類の重金属元素の含量をICP法で測定し、野鳥が環境汚染のモニタリングに適しているか否かを検討した。この結果、特定の元素間の相関関係と複数の元素種による複合汚染、および繁殖地、食性、棲息域と汚染の程度との関連性等についての知見が得られ、水禽類が環境汚染のモニターとしての役割を担い得ることが示唆された。また、これらの成績の大部分は11.研究発表で公表済み(一部は、公表準備中)である。 2)他方、重金属と細菌による複合汚染と重金属元素による遺伝子影響の基礎研究として、野鳥を含む野生動物と市販食肉におけるL.monocytogenes(L.m)の汚染状況を検討した。この結果、野生動物における汚染は進んでいないが、市販食肉では複数の血清型のL.mによる複合した汚染が起こっていることが示唆された。また、重金属元素(Cd、V、Sn)を含む培養液中でL.m分離株を継代培養した後に染色体DNAを抽出した。その結果、制限酵素切断パターンの変化が観察され重金属元素による遺伝子影響を検討するための基礎が確立された。 3)摘出臓器と培養細胞を用いて、重金属元素のin vitroでの取り込み状況を検討した。汚染物質としてはこれまで測定が難しかったVについて、モルモットの摘出盲腸ヒモでの取り込み状況とその影響との関係を明らかにした。またVを指標として、培養細胞(Vero細胞)が金属元素によりどの様な影響を受けるかを検討し、これまでに摘出臓器で得られている成績と比較した。この結果、Vero細胞は摘出臓器より早い反応ではあるが同様の成績を示した。これらの成績の一部は報告済みであるが、さらに継続して検討を続けている。
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