林間や雑草地にめん羊を放牧した結果、植生は無放牧区はチカラシバが独占種となったが、放牧区では実験前より再生力や踏圧に強い草種が増加し、蹄耕法の効果が確認された。土壌において窒素は全区で減少したが、放牧により減少の割合が減ったことが確認された。リン酸は放牧区でも蓄積したが、無放牧区の蓄積に達せず放牧の効果は確認できなかった。また窒素やリン酸は林間区の蓄積量が常に非林間区より多かった。カリウムは林間地で減少した。pHは放牧により中性に近づく傾向があり土壌化学特性の向上が示唆された。放牧による土壌硬度の増加があった。またポットの試験では、降水による窒素、リン酸の固定が促進された。草による窒素固足の促進が認められた。これらより放牧による土壌の化学特性の向上が認められたが、林間地と非林間区とは異なった。 糞量に比例して、草の成長度が有意に高かった。未放牧地の牧草窒素含量は3.7%、放牧地牧草で3.3%、放牧地野草で1.6%と放牧、未放牧にかかわらず牧草の方が有意に高かった。また牧草の窒素含有量は放牧、未放牧を比較すると大きな違いは見られなかった。放牧年数の長期化に比例し、バイオマスは高まる傾向があった。また、システムダイナミックスの手法でこれらの結果と報告からのパラメータを代入したモデルを用いてシミュレーションによる理論のテストと結果の観測、推論の修正をし、総合的な考察を行った。現行のまま推移すると、50年後の日本の農用地には現在よりも約133.5kg/ha多い窒素が蓄積されることが算出された。わが国の耕作放棄地の半分にあたる約7.5万haを開発し飼料の自給を行った場合をシミュレートしたところ、農地への窒素の蓄積は約131.5kg/haになることが示された。この結果に加え、中山間地域の10分の1にあたる約20.1万haを開発造成した場合には、窒素の蓄積が約101.8kg/haに抑えられることが示された。
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