研究概要 |
サゴ澱粉抽出残残渣渣の飼料化の際の問題点の一つに窒素源の補強がある.前年度,残渣をアンモニア処理することで成果が得られた.しかし,アンモニア処理はサゴ澱粉抽出残渣が排出される東南アジアの澱粉生産現場の状況から考えると,アンモニアの毒性のため,種々の問題を生ずる恐れがある.そこで,本年度は残渣に有用微生物を繁殖させることの可能性および尿素を添加したサイレージ法を検討した. Chalara paradoxaおよびTrichoderma viride IFO 3117をツアペック培地50mlて回転振盪培養して生育させた菌体を,同培地で水分70%になるように調整した残渣粉末に加え,時々ふり混ぜながら30℃で7日間培養した.容器は綿栓をした三角フラスコを用い,無殺菌で行った.窒素量が増加したか否かはケールダール法で総窒素量を定量し判断した.その結果,両菌とも対照に比べほとんど総窒素量の増加は認められなかった.菌の生育に必要な微量成分の不足を考慮し,米糖0.1%を添加した実験を行ったが総窒素量がわずかに増加したとはいえ有効であるとの判断に至らなかった. 尿素を添加したサイレージの調製は以下のように行った.尿素添加量6%,尿素分解菌源(米糖または大豆植物体)0.5%,水分量70%,温度30℃で処理し,8週間まで経時的に取り出して,先ず水分量,pHおよびアンモニア量を分析した.次いで55℃で一晩通風乾燥し,水分量,総窒素量,残存尿素量,残存澱粉量,および消化性を定量分析した. 尿素は2週までに含量2%程度にまで分解された.アンモニアは約3%含まれるようになった.このためpHが8.0まで上昇した.この後pHは6.8まで下がった.総窒素量は2週まで減少したが,その後増加した.澱粉含量は約25%低下した.消化性は向上しなかった.腐敗は認められなかった. pHが上昇から下降に転じたこと,澱粉含量が減少したこと,消化性の向上が認められなかったことなどから考えて,尿素を添加したサイレージでは初期のpH上昇が不十分で,他の菌との競合が起こり窒素源は付与されたもののアンモニア処理のような効果が得られなかったものと考えられる.
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