研究概要 |
1.黒麹菌 Aspergillus niger No.12株はそのゲノム上に重複したエンド型イヌリナーゼ遺伝子inuAとinuBを保有する。イヌリン、フルクトース、またはグルコースを炭素源として本菌株を液体培養後、それぞれの菌体がら調製したポリ(A)+RNAの逆転写反応とそれに続くPCRで、本酵素をコードするcDNAを増幅した。いずれの炭素源で増殖した菌体から調製したcDNAもinuBに特異的なプローブとのみハイブリダイズし、inuA由来のcDNAは検出されなかった。inuB遺伝子の上流に4ケ所の転写開始点、翻訳開始コドンの116 bp上流にTATAボックス(TATATA)が認められた。inuB転写産物のポリ(A)付加部位は、翻訳終止コドンの94〜297bp下流に多数存在した。 2.A.niger No.12株が生産する細胞外エンド型イヌリナーゼをブロムアセチル・セルロース(BAC)、セルロース・カーボネート(CC)およびCNBr一活性化セフアロース4B(CAS)に共有結合により固定化した。固定化酵素は重金属や阻害剤に対して抵抗性を増大した。CAS固定化酵素は、イヌリン分解の最適温度が45℃から60℃に上昇した。PH安定領域はBAC固定化酵素はアルカリ側に、CC固定化酵素は酸性側に移動した。Km値はBAC固定化酵素では低下し、CAS固定化酵素では上昇した。 3.Penicillium sp.TN一88株由来エンド型イヌリナーゼ遣伝子(inuC)の0RF(1,545bp)は介在配列を含まず、N末端のアミノ酸25残基からなるシグナルペプチドと490残基の成熟酵素をコードした。成熟酵素には、3個のシステイン残基、10ケ所のN-グリコシル化部位が存在した。inuC遺伝子の推定アミノ酸配列はA.nigerとPenicillium purpurogenum起源の同酵素とそれぞれ72%と85%の相同性を示した。分子系統樹は,糸状菌エンド型イヌリナーゼは細菌レバナーゼに近縁であることを示した。
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