本研究では 酢酸菌(bacterium xylinum)により生合成されるバクテリアセルロースに代表される生分解生を有する糖質を機能化の出発物質とする。それらの糖質の生分解性を維持したまま機能性を付与するための条件確立と、機能性官能基が与える生分解性への影響を明らかにすることを目的としている。すなわち、生分解性と、官能基の置換度・置換基分布と物性の関係を明らかにしたいと考えた。最終的には、化石資源から作られるブラスチック類の代替物質を目指すものである。 今回はバクテリアセルロースとサルファイトパルプを出発物質に選び、機能性官能基としてシアノエチル基の導入し、アセチル化誘導体と比較検討する事によって評価を試みた。 バクテリアセルロースを、その形態的特徴を維持したままシアノエチル化に供する事は困難で、サルファイとパルプを出発物質とした時ほど高置換度の誘導体を得ることは出来なかった。また、本実験ではセルロースの6位に導入された置換基はセルラーゼの働きに対して立体障害となりうる可能性が示唆された。一方、低置換度のセルロース誘導体では酵素分解性を保ちつつ、導入した官能基の性質も低置換度なりに発現させることが可能であった。研究期間の関係で、光分解性・微生物分解性は現在検討中である。今後は、さらに置換度の高い誘導体を得るための新たな反応様式の開発と、置換度・物性・分解性の定量的な関係の解明が望まれる。
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