研究概要 |
ヨモギエダシャクの雌成虫は、性フェロモン成分としてcis-3, 4-epoxy-6, 9-nonadecadiene(1)を分泌する。これまでのin vivo実験において、1はフェロモン腺で進行する3, 6, 9-nonadecatriene(2)のエポキシ化反応により生成するが、2の前駆体と考えられるC20トリエン脂肪酸のフェロモン成分への取り込みは認められていない。このことから、2はフェロモン腺以外で生合成され体液を経由してフェロモン腺に移動することが考えられた。そこで本種処女雌の体液を分析するとともに、in vitroでの実験系を確立することとした。 処女雌から直接体液を絞り取ることは困難であったため、切開した腹部を数mlの蒸留水で洗浄し体液を得た。混入した組織片を遠心分離にて除去した後、その水層をヘキサンとともに良く震蘯した。ヘキサン層をフロリジルカラムで精製しGC-MSにて分析したところ、1雌あたり約50ngのトリエン(2)の存在が確認された。この結果は、disparlureの前駆体である不飽和炭化水素がマイマイガの体液中に存在することと一致しており、フェロモン前駆体である2の合成場所はエノサイトあるいは真皮細胞であることを示唆している。一方、培養フェロモン腺でのエポキシ化も確認でき、現在、エポキシ化の過程に及ぼすPBANの働きを検討中である。
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