1.知覚小体に随伴する終末シュワン細胞の形態と周囲組織との相互関係を明らかにする目的で、ラットの歯根膜ルフィニ終末と洞毛周囲ルフィニ終末・槍型終末を、S-100蛋白の免疫組織化学、NaOH浸軟法を用いた走査電顕、通常の方法に従った透過電顕の3つの方法で観察した。どの知覚装置でも、終末シュワン細胞は、シュワン鞘から球形の核周部が細い首をもって突出した、特異な形態を示した。多数の細かい突起が、これらの細胞のシュワン鞘先端部を丸い核周部から起こり、周囲組織に向かって伸びた。こうした過剰な突起は、神経の発生・再生過程で出現する、未分化なシュワン細胞にも見られることが知られる。成熟したシュワン細胞では、これらの突起は軸索終末を周囲組織に結合させ、機械刺激が受容部位に伝わるのを助ける他、周囲組織の生理的、病的改変に適応した知覚終末の形態変化に関わると予測される。 2.皮膚表皮や粘膜上皮の基底層に分布するメルケル細胞は、微絨毛によって上皮組織の機械的変形を感受し、顆粒に含まれる伝達物質を上皮内神経終末に向かって放出すると一般に考えられている。機械刺激がメルケル細胞微絨毛にどのように伝わるかを検討する目的で、この細胞と周囲細胞の相互関係を、ラットの洞毛外根鞘と硬口蓋上皮で走査電顕観察した。外根鞘基底層のメルケル細胞は平滑な側面を示し、頂部から多数の長い微絨毛を出して、表層の上皮細胞に深く食い込ませていた。これに対し、硬口蓋のメルケル細胞は、比較的短い微絨毛を不規則に放射し、それらの多くは上皮細胞の間隙に入りこんで自由端で終わっていた。前者の微絨毛の方が、後者よりも組織の変形の検知に好都合と考えられる。
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