知覚神経終末が機械的刺激を受容するしくみを解析するため、神経終末の微細構造と周囲組織との相互関係を、水酸化ナトリウム浸軟法を応用した走査電顕と通常の方法に従った透過電顕によって観察した。一部の試料については、軸索終末とシュワン細胞を同定するため、それぞれのマーカー物質であるprotein gene product-9.5とS-100蛋白に対する抗体を用いた免疫組織化学を行った。観察はラットで行い、観察対象として、歯根膜線維の張力を検知する遅い順応性の機械受容器であるルフィニ終末と、洞毛の動きの加速、減速に応答する速い順応性の受容器である槍型神経終末を選んだ。どちらの知覚終末も共通の構造を示す主部と、その末端に付属する、それぞれの終末タイプに特異的な部位の2つにわかれた。主部は、一本の扁平な軸索終末を2枚のシュワン細胞突起が挟んだ三つ組み構造を呈し、厚い基底膜様物質によって、周囲組織から隔離されていた。一方、末端部は、遠位方向に広がる長いシュワン細胞突起とその基部に随伴する軸索の指状突起によって特徴づけられた。歯根膜ルフィニ終末では、これらのシュワン細胞突起が舌状を呈し、歯根膜線維にきつく巻き付いていた。これに対し、洞毛周囲槍型終末では、シュワン細胞突起は紐状で、無定型基質中をまっすぐに伸び、硬い結合組織要素に扁平な末端を付着させていた。こうした神経終末先端部の構造は、従来の薄い組織切片の観察では示されなかった。本研究は、これらの構造を、組織の機械的変形や動きを知覚装置に効率的に伝え、刺激受容に関わる可能性のある部位として提案する。
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