本研究は、排卵に向かう成熟卵胞と閉鎖する卵胞との構造上の違いを免疫組織化学を含む形態学的方法により解明することを目的とし、研究期間内につぎのことを明らかにした。 1.排卵に向かう成熟卵胞は、1)直径約0.6mmに成長する。2)卵胞周囲に毛細血管網を発達させる果粒層細胞間のギャップ結合を細胞内に取り込み消失させる。4)正常な成熟卵胞も26〜110個のアポトーシス細胞を含む。 2.閉鎖するとみられる卵胞ではアポトーシス細胞の出現頻度が高く、アポトーシス細胞を正常な果粒層細胞が貪食する像をしばしば認めた。 3.アポトーシスはすべての発育段階の卵胞に出現し、とくに未成熟マウスの卵胞において高頻度にみられた。 4.アポトーシスに陥った果粒層細胞を貪食する細胞は、マクロファージに対する特異抗体を用いた免疫組織化学的結果から、隣接する正常な果粒層細胞であり、マクロファージは閉鎖卵胞の退縮に関与しないことを明らかにした。 5.閉鎖卵胞の卵細胞は、自己融解を行うとともに透明帯を侵入した正常な果粒層細胞により貪食され、ここでもマクロファージは関与してないことを確認した。 以上の結果から、マウスの閉鎖卵胞は高頻度に発現したアポトーシス細胞を正常な果粒層細胞が貪食することにより、また、卵細胞についても同様の機構で退縮させていることから、マウス卵巣の閉鎖過程にマクロファージは関与していない可能性が高い。
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