本研究は、排卵に向かう成熟卵胞と閉鎖する卵胞との構造上の違いを免疫組織化学を含む形態学的方法により解明することを目的とし、平成11年度につぎのことを明らかにした。 1.排卵に向かうマウス卵巣の成熟卵胞は、1)直径約0.6mmに成長する。2)卵胞周囲に毛細血管網を発達させ、血管内腔は血球成分でうっ滞している。3)果粒層細胞間のギャップ結合膜は、細胞内に取り込まれ、消化させる。4)正常な成熟卵胞においても26〜110個程度のアポトーシス細胞を含む。 2.閉鎖するとみられる卵胞では、アポトーシス細胞の出現頻度が明らかに高く、アポトーシス細胞を隣接する正常な果粒層細胞が貧食する像をしばしば認めた。 3.アポトーシスはすべての発育段階の卵胞に出現し、とくに未成熟マウスの卵胞において高頻度にみられ、成熟排卵に至る卵胞と明らかに違いが認められた。 4.アポトーシスに陥った果粒層細胞を貧食する細胞は、隣接する正常な果粒層細胞であり、特異抗体を用いた免疫組織化学的結果から、マクロファージは閉鎖卵胞の退縮に関与しない可能性が強く示唆された。 以上の結果から、マウスの閉鎖卵胞は高頻度に発現したアポトーシス細胞を正常な果粒層細胞が貧食することにより、また、卵細胞についても同様の機構で退縮させていることから、マウス卵巣の閉鎖過程にマクロファージは関与していない可能性が高い。
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