研究概要 |
Srcファミリーチロシンキナーゼの基質として知られるカベオリン-1のチロシン燐酸化されたものを認識する抗体(PY14)を作成し、血管内皮細胞におけるカベオリン燐酸化とLDLなどの内在化との関連性について検討した。ラットin vivo組織の蛍光抗体標識では、PY14は連続型毛細血管および細静脈の内皮細胞にのみ陽性を示した。カベオリンの燐酸化の生理的意義解明のモデル実験として、血管内皮細胞を用いた。通常条件においては培養血管内皮細胞でPY14の反応は陰性であったが、チロシンフォスファターゼの阻害剤あるいは酸化ストレスを負荷すると、陽性となり、同時にカベオリン-1の標識は細胞辺縁部から核周囲部に移行した。カベオラの他のマーカーであるカベオリン-2やIP3レセプター様蛋白質も同様の部位変化を示した。これらの刺激された細胞では、通常細胞表面に存在するカベオラが激減しており、細胞内にカベオラとほぼ同じ大きさのカベオリン-1抗体陽性の小胞が、多数観察された。この抗体で認識されるウェスタンウブロット上のバンドはゲニスタインとハービマイシンの前処理で消去されたことから、この燐酸化はチロシンキナーゼの関係する反応によるものであると思われた。低分子量GTPase結合蛋白質のRab4,Rab5とカベオリンの二重標識で粗面小胞体への内在化を確認した。また、高血圧系のラットSHR/lzmを高脂肪高コレステロール食で飼育し、頚動脈を同抗体で検索したところ内膜肥厚部の脂肪を大量に蓄積した平滑筋に陽性所見がみられた。この部位は粥状動脈硬化によって平滑筋細胞が遊走増殖した部位と考えられる。 今後このようなカベオリンの脂肪代謝に対する関連性を示唆する現象の生理的機構の解明をさらに進める必要がある。
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