研究概要 |
1, 抗Fyn蛋白モノクローナル抗体(生理研・八木健助教授から分与)を用いて免疫電顕を行い、マウス精巣におけるFyn蛋白の細胞内局在を調べた。Fyn蛋白陽性反応はセルトリ細胞の細胞質に局在し、生殖細胞には存在しなかった。これは、光顕による観察結果と一致した。 2, セルトリ細胞がelongate spermatidの頭部と接する部位にあるectoplasmic specializationを、ピペッティング等の操作により、spermatidの頭部とともに精上皮から分離した。これを、抗Fyn蛋白抗体と蛍光標識ファロイジンとを用いて二重染色し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、ectoplasmic specializationにおいて、Fyn蛋白とアクチンフィラメントが共存することがわかった。 3, マウス精巣組織のTriton X-100可溶分画と不溶分画を電気泳動後Western blottingを行った結果、Fynは大部分が不溶分画(細胞骨格分画)に回収された。Fynは生後1週齢精巣ですでに検出され、3週齢精巣で増加していた。また抗リン酸化チロシン抗体を用いてWestern blotを行った結果、fynノックアウトマウス精巣では、約80kDaのチロシンリン酸化蛋白が、野生型マウスと較べ顕著に減少していた。この蛋白は主に細胞骨格分画に回収され、生後1週齢の精巣では検出されず、3週齢精巣で検出された。 4, 以上の結果から、Fynチロシンキナーゼは精巣において細胞骨格と結合し、セルトリ細胞-生殖細胞の相互作用に関与することが示唆される。
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