転写調節因子のひとつであるペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体(PPAR)によるペルオキシゾームの形成機転・構造の調節機構を明らかにし、さらに、その起源となる構造を検出することを目標として、ペルオキシゾーム特異蛋白質の転写調節因子PPARを遺伝子欠落せしめたマウス(ノックアウトマウス)およびanti-senseRNA法によりPPARの発現を阻害した培養細胞について解析を行っている。 平成10年度は主にPPARαノックアウトマウスについて研究を行った。ノックアウトマウスにペルオキシゾーム増殖剤Wy-14643を投与した肝臓組織を用い、非投与群と正常マウスを対照として比較検討した。Wy投与によるペルオキシゾーム特異蛋白質の量的変化をウェスタンブロット法により比較した。パラフィン切片に免疫染色を行い、凍結切片を脂肪染色した。ロビクリルK4M超薄切片をプロテインA金法にてペルオキシゾーム特異蛋白質を免疫染色して電顕観察し、また、画像解析によりペルオキシゾームの数・面積の変化を解析した。ノックアウトマウスでは、基質・膜蛋白の量はWy投与により変化が起きなかった。電顕観察によれば、正常群ではWy投与によりペルオキシゾームの数と大きさがともに著明に増加したが、一方、ノックアウトマウスでは、Wy投与によりペルオキシゾームの数は著明に増加したものの、個々のペルオキシゾームの大きさは減少した。PPARaは特異蛋白質量と大きさのみを制御し、他の因子が数を規定することが推定された。 今後の研究の展開 平成11年度は、初代培養肝細胞およびラット肝臓癌細胞H4IIEC3について、antisenseRNA法でPPARα・PPARβ・PPARγの発現を阻害する実験を予定している。
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