個体の発生過程・ペルオキシゾーム増殖剤の投与・様々な生理的な刺激のもとで、細胞増殖を伴いながら、ペルオキシゾームが小さな構造として現れて数と大きさが増す。この現象を解析し、ノックアウトマウスを用いてその仕組みを明らかにすることを目指している。本研究は、転写調節因子のひとつであるペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体(PPAR)によるペルオキシゾームの形成機転・構造の調節機構を明らかにし、起源となる構造を検出することを目標とした。ペルオキシゾーム特異蛋白質の転写調節因子PPARαノックアウトマウスおよびanti-senseRNA法によりPPARの発現を阻害した培養細胞について解析、この二つの実験を行った。前者については解析が進んだものの、後者については発表できる結果が得られなかった。 【研究結果】1)発生過程の腎臓を初めとする各種器官において、ペルオキシゾームは小さな構造として観察され、組織の成熟とともに数・大きさ・酵素量が増す。2)褐色脂肪細胞において、寒冷暴露により細胞増殖・ペルオキシゾーム増殖が起きる、その現象はPPARにより促進される。3)PPARαの活性の亢進により肝細胞において、細胞増殖・ペルオキシゾーム増殖・脂肪肝が起きる。その現象をPPARが制御していることが推測された。4)PPARαは肝細胞の細胞周期を調節する。 【考察】ペルオキシゾームの数と大きさの調節についてはPPARαはペルオキシゾーム特異蛋白質量と大きさを制御し、他の因子が数を規定することが推定された。ペルオキシゾームの起源については、従来は、小さなペルオキシゾームが出現して大きくなりそれが分裂して数が増えると言われてきたが、必ずしもこのモデルが全てのペルオキシゾーム増殖現象に当てはまらないことが示された。ペルオキシゾーム増殖剤による肝発癌において、細胞周期の制御により、PPARαが重要な役割を演じていることが推測された。 【付随的な成果】新生ペルオキシゾームを光顕・電顕で可視化するために、組織化学的な研究方法が開発された。
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