研究概要 |
神経細胞およびPC12細胞におけるニューロフィラメント(NF)とミトコンドリアの性質についてそれらの細胞が変性あるいは細胞死に陥る際にどのような変化が起きるかを解析した。NFに関しては生後3週で強直性痙攣のため死ぬ直前の変性神経細胞のジンピーミュータントマウスのNFを解析するとNFは神経細胞体では変化がみられないが、軸索では増加し、それもNF構成蛋白の1つであるNF-Hの非リン酸化型の割合が極めて増加し、さらにNF-Lは若干であるが、NF-MおよびNF-HのmRNAは顕著に増加することがわかった。すなわち、ジンピーマウスの髄鞘欠損軸索ではNF密度(数)の増加し、かつそのサブユニット蛋白、特に非リン酸化型NF-MとNF-Hが異常に増加し、そのため軸索NFの構築が変化し、軸索輸送などの神経機能に障害が起き、骨格筋の萎縮が起き、呼吸筋の痙攣のため死に至ると考えられた(Gotow.et al.,1999)。ミトコンドリアについては神経変性、神経細胞死のモデルとして細胞死の方向に進行する血清除去PC12細胞のミトコンドリアを用いてミトコンドリアに局在する(大部分は内膜に局在することを見出した)細胞死抑制蛋白であるBc1-2の分布を免疫細胞化学的に検索するとβサブユニットやポーリンなどのミトコンドリア内在蛋白は変化しないが、大部分のBc1-2はミトコンドリアから細胞質に移動することがわかった。詳細に観察するとミトコンドリア内にあるBc1-2の多くはミトコンドリア外膜に比較的多く見られ、細胞質に移動したものいくらかは小胞体に関連していることもわかった。細胞分画法でもBc1-2蛋白がやや軽い方の分画に移動することもこの結果を支持することが理解できる(Gotow et al.,投稿中)。現在ミトコンドリア分画で内膜から外膜分画に移動することを確認しつつある。さらにシバラやジンピーなど突然変異マウスの変性神経細胞のミトコンドリアでそのBc1-2蛋白の分布がPC12細胞同様変化する傾向にあることに加えて、これらのミトコンドリアとニューロフィラメントとの結合関係が不安定になることがわかりつつある。
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