神経変性あるいは細胞死の際の神経細胞のニューロフィラメント(NF)とミトコンドリアの変化を神経変性疾患モデルマウスおよびNF-HlacZ遺伝子導入マウスの神経細胞さらにPC12細胞を用い解析し、これらの小器官が細胞死にどのように関与しているかを検討した。NFに関しては髄鞘形成不全のジンピーミュータントマウスではNFは神経細胞体では変化がみられないが、軸索では増加しかつ配列が不規則でクロスブリッジの発達が悪く、特に非リン酸化型NF-Hの割合が増加し、NF-MおよびMF-HのmRNAも顕著に増加することがわかった。すなわち、ジンピーマウスの軸索ではNF蛋白発現異常のため軸索NFの構築が変化し、軸索輸送などの神経機能に障害が起き、骨格筋の萎縮が起き死に至ると考えられた。 ミトコンドリアについてはNFが細胞体に蓄積し、軸索NFがほとんど欠損する上記の遺伝子導入マウスおよび髄鞘形成不全のシバラミュータントマウスので著しく膨大することがわかり、特に前者では膜性変性小器官が軸索に蓄積し、輸送障害像を呈するが、ミトコンドリア内の細胞死抑制蛋白であるBcl-2が増加するので、軸索変性に抵抗している可能性が示唆される。すなわちNFが、おそらくそのNF-Hが、軸索で増加しなければミトコンドリアの機能亢進により軸索変性が進行しにくいと判断される。事実このトランスジェニックマウスの軸索は細くなるものの骨格筋にはほとんど変化がみられなかった。次に細胞死の方向に進行する血清除去PC12細胞のミトコンドリアを用いてミトコンドリアのBcl-2の分布を検索するとミトコンドリアが小さくなり、サブユニットβ、ポーリンなどのミトコンドリア内在蛋白は変化しないが、大部分のBcl-2はミトコンドリアから内からミトコンドリア外膜および細胞質に移動することがわかった。
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