平成10年度から3年間に渡って「細胞内小器官レベルでの三次元構造の観察」を特色とした研究を進め、最終年度として以下の研究を行った。 (1)分泌に関わる細胞骨格の細胞内配列:昨年度の結果から十二指腸の吸収上皮細胞において分泌の中心的細胞内小器官であるゴルジ装置を支える細胞骨格が微小管であることが明らかとなったが、極性をもって配列する上皮細胞において微小管形成中心(MTOC)がどこにあり、それと関連しながら微小管の機能の異なる2つの端が細胞内にどの様に配列しているかは未だ不明である。そこで、MTOCに存在するγ-tubulinに対する抗体を用いた免疫蛍光染色を行い、吸収上皮細胞においてMTOCと微小管との三次元的局在を明らかにすることを試みた。4種類のγ-tubulin抗体を用いたが、Western解析でも認識を確認したこれら4種類の抗体全てが異なる染色性を示し、吸収上皮細胞におけるγ-tubulinの局在は混沌とした結果となった。しかし、ゴルジ装置辺縁部または3細胞の連結部にγ-tubulinまたはγ-tubulin様タンパク質の存在が示唆される結果が得られ、MTOCやγ-tubulinの機能と局在が1つのトピックスとなっている現在において、今後の期待される貴重な成果が得られた。 (2)胃の壁細胞における分泌状態と分泌構造との三次元的解析:胃の壁細胞は分泌刺激を受けると、小管小胞構造が細胞内分泌細管の膜へと開口し、効率的に塩酸を分泌することが知られている。胃粘膜の頂部から底部かけて配列する壁細胞全体での変化を光顕的腺レベルでとらえることを新たに試みた。その結果、抗プロトン・ポンプ抗体を用いた免疫蛍光染色の染色パターンから壁細胞の塩酸分泌活性を判別できることが明らかとなった。 以上、共焦点レーザー走査顕微鏡と併用しながら直接3D顕微鏡をベースに用いて三次元解析を基本とした観察により、詳細で多例的結果を得ることができた。
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