本科学研究費を得ることにより、平成10年度から直接3D観察法を導入し「細胞内小器官レベルでの三次元構造の観察」を特色とした研究を三年間に渡って進めることができた。また、ダブルダイクロイックフィルターも装着し、同時蛍光二色三次元観察を可能とした。この三年間に行ったことを以下に簡潔にまとめる。 1.直接3D顕微鏡の評価:直接3D顕微鏡は、接眼レンズで覗いた視野内に3D像が見えるという簡便で安価な装置である。切片内に存在する個々の細胞のもつ立体感やその中にある小器官の空間的配置を実感でき、通常の顕微鏡を越えた有用性の高い装置であることがわかった。また、広視野を短時間で3D観察できる利点も有する。さらに高倍率な観察は共焦点レーザー走査顕微鏡を併用することにより、効率的3D観察が行えると考える。 2.上皮細胞の分泌装置とそれを支える細胞骨格:固定・染色法に改良を加えることにより、十二指腸の上皮細胞での微小管染色に成功し、ゴルジ装置を中心とした分泌装置とそれを支える細胞骨格である微小管との関係を三次元的に明らかにすることができた。さらに、微小管形成中心と関連したγ-tubulin染色の結果から、ゴルジ装置辺縁部や3つの細胞の連結部にγ-tubulinまたはγ-tubulin様タンパク質の存在が示唆される結果が得られ、今後の期待される成果と考える。 3.胃の壁細胞における塩酸分泌に関連した構造:胃の壁細胞において、塩酸分泌に関連した構造をプロトン・ポンプに対する抗体を用いた免疫蛍光染色により、分泌状態と関連させて定量的に解析することができた。また、発達した分泌細管を取り囲むようにミトコンドリアが集合して配置していることは、エネルギー依存的にプロトンを排出するための効率的局在であると考えられた。 以上、3D観察を基本とした解析により、より詳細でかつ多例的結果を得ることができた。
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