研究概要 |
二分脊椎の作製にはチタン薄膜等の留置は必ずしも必要では無く、刺繍針を研磨した鋭利なナイフによる脊椎の開裂が効果的であった。主にstage18-20の鶏胚腰仙部に1,3,5又は7体節分の再開裂を加えて二分脊椎モデルを作製した。光顕、TUNEL染色、電顕による結果は以下のようである。 (1)脊髄裂を伴った二分脊椎では、脊髄の中心管は背側に開き、その構造は第四脳室下の構造に似ていた。 (2)光学顕微鏡で観察したように正常脊髄に比較し7体節再開裂二分脊髄例では白質、灰白質、胚芽層の境界が不明瞭であるが、電子顕微鏡でも二分脊髄例でこれらの境界はさらに不明瞭である。 (3)TUNEL染色の結果から、術後4-6日目で細胞死が多く認められることから、脊髄での神経細胞死は手術による直接損傷ではなく、持続的なものと判明した。 (4)二分脊髄を電子顕微鏡で観察すると組織内が粗で細胞外腔が大きいのが目に付く。このような部分にはシナプスは全く見られない。発生期の細胞外腔は神経細胞が分化・成長したりその軸索や樹状突起が伸長するのに重要なスペースである。発生期の脊髄の細胞外腔は初期にはかなり広いが、発生が進むにつれて狭くなる。二分脊椎においては時期が進んでも脊髄細胞外腔が広いままであることからその部分での発生が遅れていることが考えられ、実際、これらの細胞外腔の広い部分には(5)のようにシナプスは非常に少なかった。 (5)正常でも、二分脊髄でもシナプスは灰白質に面する白質内に限局する。シナプス数は、二分脊髄では29個、正常脊髄では47個であった。特に背側でのシナプス減少が著明であった。 (6)二分脊椎動物を孵化させることが可能で、脊椎損傷の程度により歩行障害が起こることが分かっており、二分脊椎による臨床症状解明に重要なモデルとして期待される。
|