研究概要 |
血液や組織液中に多量に存在するATPを加水分解し、プリン受容体へのシグナルを調節する細胞膜酵素のecto-ATPase、ecto-Apyraseの組織分布と肝細胞における発現の発生と細胞内局在を検討し、次の結果を得た。 ・生化学的方法によりecto-ATPase、ecto-Apyraseは細胞膜画分に存在し、アルデヒド系固定液に抵抗性を示す。ecto-ATPaseはdiethylcarbonateで完全に活性が阻害される。一方、ecto-Apyraseはsodium azideによって阻害される。 ・組織化学的方法によって肝臓、消化管、心臓、小脳におけるecto-ATPaseの局在を検出した。その結果、肝臓では毛細胆管に、小腸では微絨毛と神経線維に、心臓では細胞膜とT管に、小脳では顆粒細胞とプルキンエ細胞に強い活性が存在する結果を得た。 ・肝細胞のecto-ATPase、ecto-Apyraseは胆汁輸送蛋白の一群に属し、その動態は他の胆汁輸送体(MDR、MRP2)と同じであることを、LPS投与により急性胆汁分泌障害を引き起こした動物で免疫組織化学的方法と組織化学的方法で示した。 ・肝細胞、小腸におけるecto-ATPaseの発現は胎生15日から見られることをラットで示した。 ・小腸のecto-ATPaseは他の組織の酵素とは異なり、分子量10,000〜20,000程度の低分子である。 ・これらの結果より、ecto-ATPase、ecto-Apyraseが肝細胞では胆汁輸送の一翼を担い、他の組織ではシグナル物質のATPの代謝を行ってプリン受容体に対するシグナルの調節に重要な働きをしていることを報告した。
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