1. ラット、イヌの小腸深部筋神経叢において、ギャップ結合構成タンパクとしてConnexin45を特異的に発現する一群の細胞が存在することを明らかにした。さらに、それらの細胞が、アクチンよりもビメンチンを強く発現することを観察し、平滑筋細胞よりも線維芽細胞に近い細胞学的特徴を示すことを明らかにした。これらの成果はCell and Tissue Researchに発表した。 2. モルモットとイヌの大腸壁において、粘膜下層と輪走筋層の境界部にある筋層下神経叢にギャップ結合タンパクとしてConnexin43を特異的に発現する細胞があり、それらの細胞もアクチンよりはビメンチンの発現が強く、線維芽細胞の特徴を示すことを明らかにした。この結果は、現在論文として投稿中である。 3. モルモット組織において抗mouse c-Kit抗体が働くことを確認し、小腸、大腸における免疫組織化学的にc-Kit陽性細胞の分布を、全載標本を用いて共焦点レーザー顕微鏡で観察し、組織内での3次元的細胞構築の解析を行った。現在、2つの論文として印刷中である。 4. 3に関連して、電子顕微鏡による細胞レベルの観察により、モルモット小腸輪走筋層では、マウス、ラットとは異なり、肥満細胞が多数存在することを確認、さらに、肥満細胞のマーカーの一つと考えられるc-Kitの免疫組織化学的観察により、これらの肥満細胞が神経線維に沿って、一定の間隔をもって配置していることを明らかにした。この結果については、論文準備中である。 5. c-Kitを欠損する自然突然変異マウス(W/W^V)の消化管壁について、c-Kit免疫組織化学および電子顕微鏡観察により、正常な同胞マウスと比較し、突然変異個体における細胞分布の違いを検討している。これまでに、新たな所見として、突然変異動物において、正常では大腸輪走筋層内にみられるc-Kit陽性細胞が欠損することが明らかとなった。 以上、マウス、ラット、モルモット、イヌにおけるc-Kit発現細胞の分布と、これら細胞による細胞性ネットワーク形成にあずかるギャップ結合の分子細胞学的特徴を明らかとし、消化管運動のコントロールとの関連について解析を進めている。今後、c-Kit欠損動物との比較における、正常および発生過程における免疫組織細胞学的解析、さらにin situ hybridizationによる遺伝子発現の解析を進める。
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