研究概要 |
1.モルモットとイヌの大腸壁において、粘膜下層と輪走筋層の境界部にある筋層下神経叢にギャップ結合タンパクとしてConnexin43を特異的に発現する細胞があり、それらの細胞はアクチンよりはビメンチンの発現が強いことから線維芽細胞の特徴を示すことを明らかにした。また、電子顕微鏡下に、この細胞が輪走筋層内に突起をのばし、同種の細胞間および周囲の平滑筋細胞との間でギャップ結合を形成することを観察した。この結果は、Cells,Tissues and Organsに掲載された。 2.マウス結腸筋層において、c-KitおよびCD34陽性細胞の分布を観察し、それぞれの層において、CD34のみ陽性の細胞、およびc-Kit、CD34共に陽性の細胞があることを認めた。筋層下神経叢、輪走筋層、縦走筋層、奬膜に見られるCD34陽性細胞は基本的にc-Kit陽性であるが、筋間神経叢領域には、CD34のみ陽性の細胞がとびとびに分布する。 3.c-Kitを欠損する自然突然変異マウス(W/W^V)の消化管壁について、c-Kit免疫組織化学および電子顕微鏡観察により、正常な同胞マウスと比較し、遺伝子変異個体における細胞分布の違いを検討した。 W/W^Vにおいては、正常では大腸輪走筋層内にみられるc-Kit陽性所見が消失する。しかし、同部位のCD34陽性シグナルは観察される。これらの結果については、日本解剖学会九州支部学術講演会において発表し、現在、論文作成中である。同時に、c-Kit陽性所見の分子機構について解析を行っている。 今後、マウス、モルモット、イヌにおけるc-Kit発現細胞の分布と、これら細胞による細胞性ネットワーク形成にあずかるギャップ結合の分子細胞学的特徴を遺伝子レベルで明らかとし、消化管運動のコントロールとの関連について解析を進め、さらに、ギャップ結合タンパク遺伝子ノックアウトマウスについてプロモーター領域に挿入したlacZの発現をマーカーとして、ギャップ結合発現細胞の研究を進めている。
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