研究概要 |
先体内部分子MN7とMC41に対する単クローン抗体(mMN7,mMC41)は精子の透明帯通過前に作用し、受精を阻害する(Saxena et al.,J Reprod Fert,1999,in press)。本研究では、これら先体内部分子と透明帯分子との相互作用を調べた。透明帯分子は卵子を酸処理して可溶化した。可溶化成分中にはZP1,ZP2,ZP3に対応する分子量200kDa,120kDa,80kDaの3つの分子が含まれており、これをメンプレンにプロットした。精子先体成分は蛋白加水分解酵素の作用を抑えるために酸抽出により調製した。先体成分抽出液を透明帯成分をプロットしたメンプレンとインキュベーションしてから、ECL法で陽性バンドを検出した。その結果、MN7分子はZP3と結合することが示された。以前のデータはMN7分子の先体成分の放出への関与を示唆したが、今回のデータはこれに付け加えてMN7分子は透明帯との相互作用によって受精に関与することを示唆する。 第2に、精子が透明帯に結合した直後における抗原分子の挙動を追跡した。媒精10分以内の透明帯に結合している精子を間接蛍光抗体法を施して共焦点走査型レーザー顕微鏡下で観察した。先体反応途中の中間段階を示す像は観察することができたが、放出された抗原が透明帯上に結合している像は見いだすことができなかった。陽性率は培養の経過にしたがって減少した。ある条件では、精子が透明帯に結合した直後(媒精10秒から30秒後)に大部分の精子が免疫性を消失した。このことは先体内部の環境が透明帯との相互作用にともない急速に変化することを意味する。陽性率の減少はシグナル伝達阻害剤(Gタンパク阻害剤,チロシンキナーゼ阻害剤、カルシウムチャンネルブロッカー)によって抑制された。
|