研究概要 |
コンカナバリンAをマウスに投与するとT細胞活性化を経て腫瘍壊死因子(TNF)やインターフェロン・ガンマ(IFN-γ)が産生され肝障害が惹起される。この時マウス株の違いによって肝障害の程度に大きな差が生じるが、これはIFN-γ産生量の差による(Mizuhara et al.1998)。これらのサイトカインはコンカナバリンAによる血球凝集作用と相まって類洞内うっ血をもたらし,広範な肝壊死を生ずる(Miyazawa et al.1998)。うっ血の生じる類洞は小葉中間帯にみられ,類洞の部域差が示唆された。さらに,T細胞活性化に伴ってリンパ球の血管外遊出が高頻度にみられた。同様の現象はインターロイキン-2を大量に投与した時にも観察され(Asano et al.1997),高サイトカイン時の共通のものと考えられた。とくに,コンカナバリンA肝炎においては類洞のみならず小葉下静脈において細胞の遊出が盛んであり,内皮細胞の性状の差が示唆された(Morikawa et al.国際肝類洞細胞シンポジウム発表,1998)。今後,接着分子発現の部域差と関連づけて解析を進める予定である。 エンドセリン-1は強力な血管平滑筋収縮物質であり,ラット肝の門脈に持続注入すると顕著な門脈かん流圧の上昇をみる。この時の血管収縮部位を連続切片の三次元構築で検索したところ,特に内径40-80μmの門脈枝において収縮が強く,平滑筋の形態変化も最大であった。一方,類洞や中心静脈,小葉下静脈の収縮は非常に弱く,血管平滑筋(および周細胞・星細胞)に部域差があることが示された(Kaneda et al.1998)。
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