研究概要 |
肝内血管は他臓器血管と異なり低圧循環系ゆえの特徴が存在する。本研究では、肝内門脈-類洞-肝静脈系の構造らなびに機械的部域差を血管内皮および周細胞/平滑筋の観点より調べた。 内皮細胞に関しては、コンカナバリンA肝炎マウスモデルを用い、リンパ球の接着、血管外遊出ならびに接着分子の発現が小葉下静脈を中心として類洞や小さな肝静脈により顕著であり、門脈では弱いことが示された(Mrikawa et al. 2000)また同モデルにおいてうっ血が類洞の小葉内部位によって程度が異なることが示された(Miyazawa et al. 1998).類洞内皮はその形態ならびに形質が他部位の血管内皮と異なる特徴をもつことが知られているが、種々の実験条件により後者の特徴を示しうることが明らかとなった(Yachida et al. 1998 ; Yamasaki et al. 1999). 周細胞/平滑筋に関しては、エンドセリニー1のかん流実験によって、門脈前終枝の部分が最も強く収縮し、一方類洞周囲量細胞のそれは弱い事から,肝微小循環の調節は類洞に入る前の門脈前終枝でなされていることが明らかとなった(Kaneda et al. 1998 ; Ekataksin and Kaneda 1998).星細胞は血管周囲平滑筋に比べ収縮力が弱く、アクチンやミオシンも乏しいが、病的条件下では、これらを発現し、特にひと肝癌の被膜においては平滑筋ミオシンも発現するようになる可能性が示唆された(Kojima et al. 1999). 本結果は、肝の生理機能や病態の解明にあたっての血管に関する基礎的データを提供するものである.
|