研究概要 |
心臓の弁や中隔の原基は初期胚心臓に形成される心内膜床である。心内膜床は心内皮細胞が間葉細胞に形質転換することによって形成される(内皮-間葉形質転換)。本研究の目的は内皮-間葉形質転換を制御する因子を分離精製しそのアミノ酸配列、塩基配列を決定することである。【研究実績】鶏胚心筋培養上清より精製した誘導因子を含む粗精製標品を抗原としモノクローナル抗体の作成を行った。【方法】ラットに抗原を免疫し、マウス骨髄腫細胞とのハイブリドーマを作製しクローンを樹立した。モノクローナル抗体のスクリーニングは胚心臓の免疫組織染色および胚心臓内皮細胞を用いた生物学的検定法を用いて行った。【結果】有力なクローンとしてクローンH8D8を得た。H8D8は胚心臓の心内膜床形成前に、心内皮と心筋層の間に存在する細胞外基質(心ゼリー)に線維状に局在した。三次元ゲルを用いた生物学的検定ではH8D8は内皮細胞の間葉細胞への形質転換を抑制した。したがってH8D8が認識する抗原は心臓形態形成において内皮-間葉形質転換を制御している因子群の一つと考えられた。さらに、免疫ブロット法にて分子量約80万のバンドを認識した。【今後の展開】1,アイソトープ標識した培養上清を作製し、免疫沈降法にて抗原の検出を行う。2,免疫吸着カラムを作製し抗原の精製を行い、アミノ酸の部分配列を決定する。
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