われわれは、人体の諸機能に重大な障害をもたらす環境エストロゲン(xeno-E)が、(1)脳発育の初期段階にどう影響するか、(1)また妊娠中のこのxeno-Eの影響を喫煙がどう修飾するか、についてマウスを実験モデルとして検討した。 今回の助成研究期間中は、初期妊娠マウスにエストリオール(E_3)とニコチンを単独に、または両者併用投与のうち、得られた新生仔の脳組織内エストロゲン受容体(ER)を定量し、またERとニューロン特異的エノラーゼ(NSE)の免疫組織科学染色を行い、脳発育へのE_3とニコチンの影響を検討した。 その結果、(1)能重量とER梁はE_3の単独投与で低下したが、E_3とニコチンの併用投与では回復傾向を示した、(2)脳内生殖中枢としての"視索前野・視床下部前内側基底部・扁桃体"複合体におけるERとNSEの染色性は、E_3単独投与で共に増強され、一方ニコチン単独投与ではER染色性は不変、NSE染色体は増強された。しかしE_3とニコチン併用投与ではE_3またはニコチン単独投与の場合と逆の結果が出た。 以上の結果より、本研究の結論として、(1)妊娠中のE_3投与は、ERを介して胎仔脳の生殖中枢の発育に強く作用することが示唆されたが、(2)ニコチンのE_3修飾効果については、明確でなく、今後の検討課題として残る。
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