研究概要 |
まず,血管内皮細胞の伸展刺激に対して誘導形成・発現されるストレスファイバーとストレスタンパク質(HSP)の相互関係についてさらなる定量的解析を進めた。すなわち,用いた摘出血管床の部位に係わらず,細胞骨格成分との関係が問題にされているHSP25とHSP90の内皮細胞における伸展刺激による発現誘導性はいずれも認められなかった。これらのHSPの機能発現に影響を及ぼす薬剤(HSP25:SB3890,HSP90:Geldanamycin)処理ではストレスファイバー形成についても何ら変化を認めなかった。従って,こうした結果は伸展刺激による内皮細胞におけるストレスファイバー形成がQuercetin処理でHSP70の合成発現を抑えた時に著しく阻害される前年度の結果とは好対照を示している。さらに,Cytochalacinでアクチン重合を阻止しストレスファイバー形成を抑えてもHSP70発現は正常であることを考えると,HSP70は血管内皮細胞の伸展刺激によるストレスファイバー形成において正に分子シャペロンとして本線維形成に必要な蛋白種を会合させるのに大きな役割を果たしていることが予測される。また,ストレスファイバーとストレスタンパク質が種々のストレスに対し細胞防御的に働いているとの作業仮説を実証するための予備実験としてH2O2による酸化ストレスをとりあげた。HSP群についてはまだ未確認であるが,この酸化刺激によってストレスファイバー形成が促進されると同時にNO産生も増強されることが分かった。今後,この実験系を使って細胞機能の一つであるNO産生度とストレスファイバーとストレスタンパク質の関連度を調べる予定である。
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