平戒10年度実験計画を一部見直し、実験的ラット肝硬変症モデル作製は四塩化炭幸投与から、近年にヒト肝硬変に最も類似した実験モデルとして普及しつつあるチオアセトアミド投与に変更した。1)成熟ラットにチオアセトアミド(体重1kgあたり300mg)を週2回腹腔内投与したところ、5週間経過群ではまだ肝線維化は著明ではなかったが、10週間経過群では肝表面に結節を形成し、組織学的には間質に幅の広い線維化を認め、さらに、偽小葉の形成が見られる重症肝硬変症の実験モデルが高率で作製できた。また、光顕観察で肝硬変症が確認された試料で伊東細胞(星細胞)の微細構造を観察すると、肝硬変症で出現することが知られているmyofibrobiast様変化が確認できた。2)対照群と肝硬変群において、エンドセリン(ET)-1、ET_A受容体、ET_B受容体の局在に関する光顕免疫細胞化学を施行したところ、対照群では門脈域の類洞内皮にET-1とET_B受容体の、伊東細胞に両受容体の免疫陽性反応が観察された。肝硬変群では、類洞内皮におけるET-1とET_B受容体の免疫陽性反応は減弱したが、間質および類洞壁に散在するmyofibroblast様伊東細胞はET-1免疫強陽性であり、同細胞のET受容体の免疫陽性反応はET^A受容体優位の傾向を示した。平成11年度は免疫電顕とET-1のmRNAの発現に関するin situ hybridizationを展開し、肝線維化とmyofibroblast様伊東細胞におけるET-1発現の関係を詳細に解析する所存である。
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