ラット正常肝において、エンドセリン(ET-1)とbigET-1の光顕免疫細胞化学とpreproET-1の発現に関する分子組織化学を施行したところ、ET-1およびbigET-1の免疫陽性反応とpreproET-1のmRNAシグナルはいずれも小葉間静脈とその分枝の内皮に観察されたが、類洞内皮と伊東細胞には見られなかった。 免疫電顕により、bigET-1免疫陽性金粒子は小葉間静脈内皮細胞の粗面小胞体に、ET-1免疫陽性金粒子はET-1の貯蔵・放出に関与するWeibe1-Palade(WP)小体に局在していることが観察された。さらに、ETAおよびETB受容体の光顕免疫細胞化学を施行したところ、両受容体ともに伊東細胞に免疫陽性反応が観察され、免疫電顕では同細胞膜に両受容体の免疫陽性反応が観察された。以上の結果から、ラット正常肝において、ET-1は主に小葉間静脈とその分枝の内皮細胞が産生し、その一部がWP小体に貯蔵されることと、細胞外に放出されたET-1は血流を経て伊東細胞のETAおよびETB受容体仲介血流調節作用に関与することが明らかとなった。次に、チオアセトアミド投与によるラット実験肝硬変モデルでET-1とbigET-1の免疫局在を検索したところ、光顕免疫細胞化学では、肝小葉辺縁部の伊東細胞にET-1およびbigET-1免疫陽性反応が見られ、免疫電顕によりmyofibroblast様変化をきたした伊東細胞の粗面小胞体にbigET-1免疫陽性反応が観察された。ET-1が伊東細胞の線維産生を亢進させることは周知の事実であることから、今回の所見は伊東細胞自身が産生したET-1がオートクライン様式により肝線維化の進行に関与することを示唆する。
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