副腎髄質細胞の種々の刺激による分泌応答に対するプロテインキナーゼC(PKC)の賦活およびphosphatidylinositol 3 kinase(PI3-キナーゼ)の阻害の影響を調べた。 1.ラット摘出潅流副腎中の髄質細胞を使用し、Calcium Green-1の顕微蛍光測光による〔Ca^<2+>〕_iの変動とカーボン電極によるカテコルアミン分泌の同時計測を実施して、PI3-キナーゼkinase阻害剤のwortmannin(WT)およびLY294002による分泌抑制効果を解析した。両試薬は10分間の高K^+(30mMK^+)刺激による分泌応答を濃度依存性に抑制したが、その抑制の程度は〔Ca^<2+>〕i応答の抑制の2から3乗に比例した。従来、WTの分泌抑制効果は〔Ca^<2+>〕i上昇以降の過程で起きるとされてきたが、本研究の結果は、WTやLY294002の分泌阻害がCa^<2+>channelからのCa^<2+>流入の抑制により生ずることことを示唆した。このCa^<2+>流入の阻害とPI3-キナーゼ阻害の関係については、分泌抑制に必要なこれら試薬の濃度が高いことなどの疑問があり、更に研究が必要である。 2.倒立顕微鏡を使用し、全反射蛍光顕微鏡(TIFM)を作製した。これを用い、マウス単離副腎髄質細胞のアクリジンオレンジ処理で分泌顆粒を選択的に染色し、緑色レザー光によるエバネッセント光照射を行い細胞膜近傍に存在する分泌顆粒の可視化に成功した。これに基づき、PhorboldibutyrateによるPKC活性化に伴う顆粒動態の変化の解析を試た。PKCの賦活は細胞膜に付着、あるいは近傍に存在する顆粒数を増加させるように見えるので、現在その解析を行っている。
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