副腎髄質細胞の種々の刺激による分泌応答に対する各種プロテイン・キナーゼの活性化の影響を分析し、以下のような結果を得た。 1.ラット摘出潅流副腎中の髄質細胞を使用し、各種刺激に対する[Ca^<2+>]i変化(Ca応答)を蛍光指示薬法により、またカテコルアミン分泌変化(分泌応答)を電気化学検出により同時計測した。ホルボル・ジブチレイトによるプロテインキナーゼC(PKC)の活性化は少なくとも2つの異なる経路で分泌応答を修飾することが明らかとなった。即ち、ムスカリン、ブラジキニン、ヒスタミンなど、レセプター/Gタンパク系を介する応答はCa応答が阻害され、初期の分泌過程に抑制が見られた。一方、ニコチンおよび上記の刺激で、Ca応答以後にPKCによる分泌の増強が認められた。フォルスコリンによるPKAの活性化ではCa応答以後の分泌増強のみが発生した。更に、PI3-キナーゼを抑制するウォルタマニンやLY29004により分泌は抑制を受けたが、これらは、Ca^<2+>流入に対するこれらの薬剤の非選択的抑制作用であると解析された。 2.PKCによる[Ca^<2+>]i上昇以後の過程における分泌の増強の発生原因を調べるため、エバネッセント光顕微法による細胞膜近傍の分泌顆粒動態の可視化を試みた。半導体グリーンレーザー光を倒立顕微鏡対物レンズの周辺部を通し、細胞チェンバーの底に張ったカバーガラス面で全反射させることにより、エバネッセント光照射場を作った。これにより、細胞膜近傍に存在するアクリジンオレンジで染色した分泌顆粒が細胞の電気刺激により消失する開口放出現象が検出できた。また、浜松医科大学光量子研(寺川研)での共同研究では、開口放出を準備するために膜に結合する顆粒数がPKCの活性化により増加することが発見された。この結果は、上記のPKCによる[Ca^<2+>]i上昇以後に発生する分泌増強作用の一つの理由と考えられる。
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