研究概要 |
本研究課題は実験材料として、ブタと若齢(5週齢)、老齢(100週齢)ラットの心内膜内皮細胞(EEC)を用いる2年間の継続研究である。本年度は初年度であり、ブタと若齢ラット各々のEECに機械的刺激としてShear stress(壁ずり応力)を負荷し、EEC由来循環調節物質の産生能への影響を検討した。 〈結果〉1) ブタEECにずり応力(0.2,1,4,6dyne/cm^2)を負荷した後、灌流液中のProstacyclin(PGI_2)産生能を測定すると、負荷強度依存的にPGI_2産生能は増加した。しかし、その産生能には、左/右心室EEC間での有意差が認められなかった。 2) ブタEECに6dyne/cm^2のずり応力を負荷し、細胞内CaストアーからのCa遊離を阻害する8-(dimetilamino)octy13,4,5-trymethoxybenzoate bydrochloride(100uM)存在下で、EECのPGI_2産生能を測定すると、その産生能は66%有意に低下した。しかし、灌流液中にCaキレート剤のEGTA(2mM)をくわえても、その影響は認められなかった。 3) ブタ、ラット共に、EECに6dyne/cm^2のずり応力を負荷しても、灌流液中の一酸化窒素量には影響が認められなかった。 これらの結果から、ずり応力負荷は細胞内CaストアーからCaを遊離させ、Prostacyclin産生能を増加させるものと思われる。また、血管内皮細胞では、ずり応力負荷により一酸化窒素産生能は増加するが、心内膜内皮細胞ではその影響はみられなかった。これは心機能への一酸化窒素による影響を反映した結果であるかもしれない。
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