研究概要 |
本研究は、末梢神経組織の神経上膜・神経内膜・神経軸索における水分子の分子環境、および、各区画間での水分子の透過性を明らかにすることを目的とした。平成10年度には以下の結果を得た。 1、 神経潅流システムの設計・作成・調整 摘出ラット座骨神経を内径1.5mmのガラス管内に潅流するフローセル型試料セルを作製し、5・10mm径の高周波コイルと組み合わせ、測定感度・精度等を検討した。結果は、10mm径高周波コイルが優位であった。このシステムについて神経潅流条件を最適化した。 2、 重水素水-軽水素水交換過程の測定 フローセル型重水素核NMRプローブを用い、正常ラット摘出座骨神経について、軽水素水-重水素水交換実験を行い、神経上膜・神経内膜・神経軸索の各分画中の水分子を、二量子NMR法により測定し、各分画間での水の透過性を測定した。また、二量子パルス磁場勾配NMR法により、各分画における水の拡散速度を測定し、軸索内部の水分子について制限拡散を検出した。これらの結果については、Magnetic Resonance in Medicineに掲載予定である。 3、 変性神経モデルについての分子配向と水透過性の測定 ワーラー変性モデルと凍結障害モデルを用い、神経上膜・神経内膜・神経軸索の各分画における水の拡散速度を測定し、変性過程による変化を測定した。 フローセル型試料セル自作用の高周波部品・ガラス部品と試薬、また、経時的NMR測定により生じる大量のデータ収集および処理のために、メモリー拡張(4GB HD,DAT)を行い、これらが、主要な消耗品費となった。また、外部データ処理用にDOSV機を購入し、FTPでデータ転送を行い、データ処理の効率化をはかった。研究成果の一部は第18回国際生体磁気共鳴学会、第3回日本マイクロイメージング研究会で発表した。
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