研究課題
本研究は、末梢神経組織の神経上膜・神経内膜・神経軸索における水分子の分子環境、および、各区画間での水分子の透過性を明らかにすることを目的とし、以下の結果を得た。1、神経潅流システムの設計・作成・調整 摘出ラット座骨神経を内径1.5mmガラス管内に潅流するフローセル型試料セルを作製し、5・10mm径の高周波コイルと組み合わせ、測定感度・精度等を検討した。結果は、10mm径高周波コイルが優位であった。このシステムについて神経潅流条件を最適化した。2、重水素水-軽水素水交換過程の測定 フローセル型重水素核NMRプローブを用い、正常ラット摘出座骨神経について、軽水素水-重水素水交換実験を行い、神経上膜・神経内膜・神経軸索の各分画中の水分子を、二量子NMR法により測定し、各分画間での水の透過性を測定した。また、二量子パルス磁場勾配NMR法により、各分画における水の拡散速度を測定し、軸索内部の水分子について制限拡散を検出した。3、変性神経モデルについての分子配向と水透過性の測定 ワーラー変性モデルと凍結障害モデルを用い、神経上膜・神経内膜・神経軸索の各分画における水の拡散速度を測定し、変性過程による変化を測定した。ワーラー変性モデルにおいて、神経内膜内の水分子環境が、神経切断後7-10日間で急速に進行すること、神経内膜内の水透過性がやや遅れて上昇することを明らかにした。
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