研究概要 |
本研究では、大量のプロトン(H^+)を短時間に細胞外に排出するユニークな機構として注目している膜電位依存症H^+チャネルの発現状況や活性制御機構をBMMC、ラット脊髄ミクログリア、マウス破骨脂肪など異なる機能を持つ細胞を用いて調べた。H^+電流の高い温度依存性はBMMC,ミクログリアで共に観察されたが、BMMCではミクログリアに比べて室温(24℃)でのチャネル活性化速度および脱活性化速度は遅く、定常電流振幅は低く、チャネル活性化のset-temperatureが細胞によって異なることが推測された。活性化型(round/ameboid)ミクログリアではH^+電流が高率(>90%)に記録され、細胞内アシドーシスによって引き起こされる細胞膨化によってチャネル活性が増大した。このH^+チャネル活性化は低浸透圧刺激によるCl^-チャネルの活性化と同様に細胞内ATPを必要としactin filamentの重合を修飾するcytochalasin Dやphalloidmにより抑制された。アシドーシスによる細胞膨化がH^+チャネル活性を増強し強力にH^+を排出することによってcytotoxicな細胞膨化から細胞を保護していることが示唆された。これは、アシドーシスと浮腫を伴うことの多い神経疾患におけるミクログリアの機能調節機構として重要な発見である。またH^+分泌細胞の一つである破骨細胞では、H^+チャネルの発現が分化過程によって影響を受けることが明らかになった。これらの結果からH^+チャネルがそれぞれの細胞の機能的状態や分化過程と深く関連して制御され、その破錠が重大な機能障害をもたらす可能性が示唆された。
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