自然発症高血圧群(SHR-SP/Izm)とその正常対照群(WKY/Izm)において、4週齢から16週齢に亘り収縮期血圧の測定と一日当たりの尿中NOx量の測定を行い、また後肢灌流系を用いて4週齢と16週齢ラットのNoradrenalineに対する血管反応とNO発生量を測定した。さらにiNOSの特異的阻害剤であるAminoguanidineを長期間投与したときも同様に収縮期血圧と尿中NOx量の経時変化および後肢灌流系でのNoradrenalineに対する反応性を非投与群と比較して、高血圧発症におけるNOの役割とeNOSとiNOS相互関連を検討した。その結果、SHR-SP群の収縮期血圧は8週齢から上昇し始め、12-16週齢で250mmHgに達したが、WKY群では4-16週齢の間120-132mmHgであった。一日当たりの尿中NOx量は4週齢ではWKY群がSHR-SP群に比べて有意に多いが、8週齢から16週齢は逆にSHR-SP群が多くなる。またその間のSHR-SP群の尿中NOx量は時間の経過と共に漸減していく。後肢灌流系を用いたNoradrenalineに対するNO発生量は4週齢でWKY群がSHR-SP群より有意に多いが、両群の血管反応は変らない。16週齢ではNO発生量は両群で変らないが、血管反応はSHR-SP群でWKY群のおよそ2倍になった。Aminoguanidineを長期投与したSHR-SP群は12週齢で非投与群に比べて収縮期血圧が有意に低下し、尿中NOx量は8-12週齢で非投与群に比べて有意に少なくなる。さらに後肢灌流系でのNoradrenalineに対するNO発生は非投与群にくらべて多い傾向が見られ、血管反応は非投与群と変らなくなった。 SHR-Sは高血圧発症前から血圧の変化に反応するNO産生が低下していること、及び過剰に発生するiNOS由来のNOは高血圧を促進する可能性が明らかになった。
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