外分泌腺における水・電解質・蛋白分泌へのエネルギー供給

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670052
• 研究機関: 岡崎国立共同研究機構
• 研究代表者: 村上 正隆 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (10104275)
• キーワード: 水電解質輸送 / タンパク分泌 / エネルギー供給 / 酸素消費 / カルバコール / イソプロテレノール / アミラーゼ / 耳下腺

研究概要

本研究は、唾液腺腺房細胞の水電解質輸送と蛋白分泌へのエネルギー供給量を測定することにある。平成10年度は、当初計画で11年度に行う予定であった計画を先に行った。すなわち耳下線血管潅流系を用い、水分泌測定・アミラーゼ分泌測定・酸素消費測定を実施し蛋白分泌に要求される酸素消費を分離測定した。分泌はイソプロテレノール(Isp)1μM,カルバコール(CCh)1μMの単独および同時投与で誘発した。Isp単独では、水分分泌は殆ど誘発されず、唾液が採取されず、アミラーゼ分泌の測定が不可能であった。一方、CCh単独投与で、アミラーゼは急速に分泌速度を上げ30秒でピークの後急速に低下し1.5分〜2分でピークの1/10程度になった。水分泌も急激に上昇し緩やかに低下、4-5分後にプラトーとなった。CCh刺激開始5分にIspを潅流液に加えるとアミラーゼ分泌は急速に上昇し、Isp添加後1-2分で最大値となりその後ほぼプラトーレベルを保った。CChによる水分分泌速度はIsp投与により影響を受けなかったが、酸素消費はCChのみの増加分の10-20%Ispにより増加した。本実験により、水分分泌が誘発されない場合、導管を通しアミラーゼが口腔内に分泌されないこと。CChにより初期一過性のアミラーゼ分泌が観測されその後抑制されるが、Ispの投与により増強されることが明らかになった。また、CCh単独投与時の酸素消費とCCh+Isp投与の酸素消費の差は、アミラーゼ分泌増加と対応した酸素消費増加分と見なすことができた。このことによりはじめて蛋白分泌に必要なエネルギー要求を測定できた。来年度は、ムチン分泌へのエネルギー供給について検討する。

研究成果

• [文献書誌] Yoshimura,K: "Cyclic AMP potentiates substance P-induced amylase secretion byaugmenting the effect of calcium in the rat parotid acinar cells." Biochim Biophys Acta. 1402. 171-187 (1998)
• [文献書誌] Murakami M: "Energy consumption associated with fluid and electrolyte transport in the mandibular and parotid glands." Eur J Morphology. 36Suppl. 121-131 (1998)
• [文献書誌] Furuyama F: "Differences in Thermal salivation between the FOK rat(a model of genotypic heat adaptation)and three other rat strains." Physiology & Behavior. 63. 787-793 (1998)
• [文献書誌] Fukuoka M: "Magnetic resonance imaging of experimental subacute spinal cord compression." SPINE. 23. 1540-1549 (1998)
• [文献書誌] Seo Y: "NMR studies of salivary glands:from energy metabolism to morphology." Eur J Morphology. 36Suppl. 98-102 (1998)
• [文献書誌] Steward MC: "Cell volume regulation and diffusion of intracellular water in salivary acinar cells." Eur J Morphology. 36Suppl. 103-106 (1998)
• [文献書誌] Seki Y: "Spatially Resolved Magnetic Resonance(eds.Bluemler P,Bluemich RB,Fukushima E)" Fast MR imaging of esophageal motility., 1998 (Weiley-VCH,Weinheim)
• [文献書誌] Seki Y: "Spatially Resolved Magnetic Resonance(eds.Bluemler P,Bluemich RB,Fukushima E)" Fast MR imaging of esophageal motility., 1998 (Weiley-VCH,Weinheim)395-401: