研究概要 |
ラットクローン化上皮性Na^+チャネル(rENaC)を構成するα、β、γサブユニットを安定型発現しているNIH-3T3細胞を用いて平成10年度計画予定に従い以下の研究成果を得た。 ホールセルパッチクランプ法を用いることにより、この発現系におけるrENaC活性に起因するホールセル内向き電流を抽出することに成功し、この電流のアミロライド感受性、膜電位依存性ゲート開閉調節、イオン選択性を電気生理学的特徴を明らかにした。さらに単一電流記録法を用いることにより、この発現系におけるrENaCを機能的に単一チャネルレベルで同定し、その単一チャネルコンダクタンス、イオン選択性、アミロライド感受性、膜電位依存性ゲート開閉調節を明らかにした。 ホールセル電流測定実験で、(1)Cs-gltamateを基本にしたピペット内液を用いると、rENaC活性に依存する内向き電流のrun-downが起きること、(2)10mMEGTAを用いてピペット内機の遊離Ca2+濃度を低くしてもこのrun-downは影響されないが、ATPをピペット内液に加えるとrun-downがATP濃度依存性に抑制されること、(3)ATP以外のヌクレオチドであるGTP,UTP(2mMで比較)を用いるとrun-downが観察されること、またADP,AMP,AdenosineではATPと比べrun-downの抑制が小さいこと、(4)10mMEDTAをMgを含まないピペット内液に加えてもATPのrun-down阻止効果に変化がないこと、(5)ATPの代わりにATP-γSやAMP-PNPを用いてもATPの効果run-down阻止効果が模倣出来ることがわかった。 outside-outパッチを用いた単一チャネル電流測定実験により、(1)上記のホールセル実験で用いた各種条件下でrENaC単一チャネルコンダクタンスが変化しないこと、(2)ピペット内液(この場合細胞膜の細胞内側を潅流していることになる)中にATPを含まないとNPoで定義されるチャネル活性の時間依存性のrun-downが見られ、このrun-downはATPの濃度依存性に抑制されること、(3)ADPなどのヌクレオチドではこのrun-downは抑制されないことがわかった。従って上記ホールセル実験で見らられたrun-downはチャネル活性のrun-downとして理解され、rENaCが細胞内ATF濃度により機能調節される可能性を示唆している(投稿準備中)。これらの研究結果をもとに次年度はαサブユニットのC端およおびN端に存在するヌクレオチド結合ドメインの構造変化を分子生物学的手法を用いて引き起こし、野性型rENaCでみられたヌクレオチドにる機能調節が変化するか否かを調べる予定である。
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