研究概要 |
ラットクロ―ン化上皮性Na^+チャネル(rENaC)を構成するα、β、γサブユニットを安定型発現しているNIH-3T3細胞を用いて以下の研究成果を得た。ホールセルパッチクランプ法を用いることにより、この発現系におけるrENaC活性に起因するホールセル内向き電流を抽出することに成功し、この電流のアミロライド感受性、膜電位依存性ゲート開閉調節、イオン選択性を電気生理学的特徴を明らかにした。さらに単一電流記録法を用いることにより、この発現系におけるrENaCを機能的に単一チャネルレべルで同定し、その単一チャネルコンダクタンス、イオン選択性、アミロライド感受性、膜電位依存性ゲート開閉調節を明らかにした。 ホールセル電流測定実験で、 (1)Cs-gltamateを基本にしたピペット内液を用いると、rENaC活性に依存する内向き電流のrun-downが起きること、 (2)10mMEGTAを用いてピぺット内液の遊離Ca^<2+>濃度を低くしてもこのrun-downは影響されないが、ATPをピぺット内液に加えるとrun-downがATP濃度依存性に抑制され、そのKmt値は0.3mMであること、 (3)run-downの抑制作用はATP>ADP=GTP=UTP=AMPの順であること、 (4)EDTA (10mM)をMgを含まないピぺット内液を加えてもATPのrun-downの抑制効果に変化がないこと、 (5)ATPの代わにATP-γSやAMP-PNPを用いてもATPの時と同様にrun-downの抑制効果が見られることがわかった。さらにoutside-outパッチを用いた単一チャネル電流測定実験により、(1)上記ホールセル実験で用いたさまざまな細胞内液条件下(ヌクレオチドなし、ATP(10mM), ATP(10mM)+EDTA(10mM), ADP(2mM),ATPgS(2mM),AMP-PNP(2mM),UTP(2mM),GTP(2mM))でrENaC単一チャネルコンダクタンスが変化しないこと、 (2)ピぺット内液(この場合細胞膜の細胞内側を潅流していることになる)中にATPを含まないとNPoで定義されるチャネル活性の時間依存性のrun-downが見られ、このrun-downはATPの濃度依存性に抑制されること、 (3)ADPではrun-downが抑制されないことがわかった。従って上記ホールセル実験で見らられたrun-downはチャネル活性のrun-downとして理解され、rENaCが細胞内ATP濃度により機能調節される可能性が示唆された。これらの機能実験の他にαサブユニットのC端およおびN端に存在するグリシンに富むヌクレオチド結合ドメインに注目し、まずそれそれN端またはC端ヌクレオチド結合ドメインのグリシンをすべてアラニンに変異させたαサブユニットを作成した.さらにこの変異体サブユニットを発現するNIH3T3細胞を作成するために、まず野性型βおよびγサブユニットを安定型発現する細胞株の作成を行い、現在そのスクリーニングをおこなっている,βおよびγサブユニットをともに発現する細胞を作成後、変異体α-サブユニットを遺伝子挿入法を用いて作成し、細胞内ヌクレオチドの効果を系統的に調べる予定である.
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