研究課題/領域番号 |
10670056
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研究機関 | 国立循環器病センター |
研究代表者 |
白井 幹康 国立循環器病センター研究所, 心臓生理部, 室長 (70162758)
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研究分担者 |
西浦 直亀 国立循環器病センター研究所, 心臓生理部, 室員 (70132933)
下内 章人 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部, 室員 (80211291)
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キーワード | 肺循環 / 弾性肺動脈 / 筋性肺動脈 / 肺小葉 / 肺細葉 / 低酸素性肺血管収縮 / カリウムチャネル / 血管口径 |
研究概要 |
昨年度、独自のX線TVシステムで麻酔下ネコの肺小動静脈口径を可視化することで、1)急性肺胞性低酸素時、主に内径100-600μmの肺動脈が収縮すること、また、2)この動脈は、voltage-dependent K^+(K_v)channe1の遮断薬で著明に収縮するが、Ca^<2+>-sensitive K^+(K_<Ca>)channe1の遮断では応答が極めて弱いことを明らかにした。本年度は、血管の組織学並びに肺の構造学の面から、ネコ肺動脈を直列方向に5つのセグメント(弾性肺葉動脈、弾性区域動脈、移行型亜区域動脈、筋性小葉動脈、筋性細葉動脈)に分類し、1)各セグメントのbasal vascular tone調節へのK_v、K_<Ca>及びATP-sensitive K^+(K_<ATP>)channelの関与、2)低酸素性肺血管収縮(K_v channe1の抑制で起こる)の特定セグメントヘの局在、さらに3)この収縮の発生機構におけるK_<Ca>及びK_<ATP>(いずれも低酸素時活性化する)の役割について、昨年度と同じ方法で調べた。 以下の結果を得た。1)K_v channe1遮断剤(4-aminopyridine)は、全てのセグメントを収縮させた。2)K_<Ca> channe1遮断剤(iberiotoxin)及びK_<ATP> channe1遮断剤(glibenclamide)は、肺葉から亜区域レベルまでの主に弾性動脈を収縮させたが、肺小葉内の筋性動脈には効果が極めて弱かった。3)肺胞性低酸素(3-7% O_2の吸入)は、主に小葉内の筋性動脈を強く収縮させた。亜区域動脈も弱く収縮したが、肺葉、区域レベルの弾性動脈は、逆に拡張した。4)iberiotoxinは、亜区域動脈の弱い収縮を増大したが、小葉内の収縮には無効であった。他方、glibenclamideはすべての低酸素性肺動脈応答に無効であった。 以上より、1)K_v channelは肺葉レベルの弾性動脈(2-3mm)から細葉内の筋性動脈(100-200μm)まで、全ての肺動脈のbasal tone調節に関与する。2)K_<Ca>及びK_<ATP> channelは、肺葉から亜区域レベルまでの主に弾性動脈のbasal tone調節に関与するが、小葉レベル以下の筋性動脈への関与は極めて小さい。3)肺胞性低酸素時、小葉レベル以下の筋性動脈(100-500μm)に強い血管収縮が、亜区域動脈(400-900μm)に弱い収縮が起こる。後者は、K_v channelを介する低酸素性収縮機構とK_<Ca> channelを介する拡張機構のバランスの結果生じるが、前者は、この拡張機構とほぼ無関係に起こることが示唆された。
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