研究課題/領域番号 |
10670056
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研究機関 | 国立循環器病センター |
研究代表者 |
白井 幹康 国立循環器病センター研究所, 心臓生理部, 室長 (70162758)
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研究分担者 |
西浦 直亀 国立循環器病センター研究所, 心臓生理部, 室員 (70132933)
下内 章人 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部, 室員 (80211291)
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キーワード | 肺循環 / 筋性肺動脈 / 弾性肺動脈 / 慢性低酸素性肺高血圧 / 一酸化窒素合成酵素 / 免疫組織化学 / 血管口径 / ラット |
研究概要 |
昨年度までの研究から、麻酔下ネコでの急性肺胞性低酸素時、主に肺小葉内の100-300μmの筋性肺動脈に、K_v channelの抑制に起因した血管収縮(低酸素性肺血管収縮:HPV)が起こり、この応答に内因性一酸化窒素(NO)は抑制的に働くことを示した。今年度は、慢性低酸素性肺高血圧症の形成過程での、NOSを介した肺動脈拡張性機構の局所的変化を、生理学並びに組織学の両面から明らかにした。 独自のX線テレビシステムを、10%O_2を3週間負荷した慢性低酸素性(CH)ラットと対照ラットに応用し、種々の一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害薬に対する筋性(100-300μm)及び弾性(>600μm)肺動脈の口径応答を、in vivoで直接計測した。さらに、これらのラットの肺動脈で、内皮型NOS(eNOS)と誘導型NOS(iNOS)の免疫組織化学的局在を調べた。非選択的NOS阻害薬は、CHラットでは、筋性及び弾性肺動脈の〜100%の血管枝で、対照ラットでは、筋性動脈の〜60%、伝導動脈の〜100%の枝で口径収縮を起こした。CHラットの筋性動脈の収縮(36±3%)は、対照ラットの収縮(10±2%)より有意に大きかったが、伝導動脈の収縮(〜25%)は両ラット間で差は無かった。選択的iNOS阻害薬に対し、CHラットの主に筋性動脈(〜70%の枝)で収縮が起きた。CHラットの弾性動脈及び対照ラットの筋性、弾性動脈で収縮した枝は〜20%未満であった。CHラットの筋性動脈の収縮(16±3%)は、対照ラット(3±2%)より有意に大きかったが、弾性動脈での収縮は増大傾向を示したものの、両者で差は無かった。神経型NOSの選択的阻害薬は無効であった。eNOS陽性血管の発生率は、筋性動脈では、CHラット〜90%、対照ラット40%と、両ラット間で差があったが、弾性動脈では、両ラットとも90-98%であった。iNOS陽性血管の発生率は、筋性、弾性動脈のいずれでも、対照ラットでは低い値(<10%)を示したが、CHラットでは高い値(50-90%)であった。以上、慢性低酸素性肺高血圧ラットでは、主に筋性肺動脈(HPVの発生部位)にeNOSとiNOSを介した血管拡張作用の増大が起こることが、免疫組織化学的並びに生理学的手法の両面から証明された。この増大は、肺高血圧の進展に抑制的作用を有すると考えられた。
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