研究概要 |
平成10年度はヒトを被験者として、安静時、運動負荷時(運動強度HRmax50,60,70%の3強度)、暑熱負荷時(下肢温浴負荷時)および感染に伴う発熱時に温熱的快適環境温度を選択させる行動実験を行い、運動時の体温変動機構について検討を行った。被験者数は安静、運動、暑熱負荷実験において8例、安静および発熱実験において4例であった。それぞれの実験終了時(運動、暑熱負荷実験では60分、発熱実験では40分)の直腸温の平均は、37.2℃(安静)、37.7℃(50%)、38.1℃(60%)、38.4℃(70%)、37.7℃(暑熱負荷)及び38.0℃(発熱)であった。選択した環境温度(Tsel)は運動時及び暑熱負荷時において安静時よりも低い環境温度を選択する傾向がみられ、実験終了時のTselの平均は29℃(安静)、25℃(50%)、23℃(60%)、21℃(70%)、23℃(暑熱負荷)であった。一方、発熱時には高いTselを選択し、実験終了時のTselの平均は32℃であった。これらの結果は、Cbanac等(1971)が報告している結果と同様であるが、体温調節機構を考える場合、末梢と深部からの温度入力情報について比較検討することが必要ではないかと考えた。そこで、平均体温(TB)が各条件においてどのような水準になるように環境温度を調節しているのか検討を試みた。各実験条件の最終値の平均Tbは35.9℃(安静)、36.1℃(50%)、36.3℃(60%)、36.8℃(70%)、36.1℃(暑熱負荷)及び37.2℃(発熱)で、安静時及び暑熱負荷時に比較して運動時及び発熱時に高いTbとなるよう調節している傾向がみられた。このことは、運動時の体温変動機構は発熱時と同様に体温の調節目標値が上方に移行している可能性を示唆するものである。 尚、運動習慣に伴う体温変動機構を探る動物実験は平成11年3月現在でセットアップが完了したため、11年度の行う予定である。
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