プロラクチン(PRL)細胞の増殖を調節するcAMP/protein kinase Aとインスリン/MAP kinaseの二つの情報伝達系の相互作用を調べた。 【研究結果】 1. MAP kinase cascadeを介してPRL細胞増殖を促進する成長因子であるインスリンの作用を十分に抑制するPD98059の濃度を決定した。5μMのPD98059はインスリン200ng/mlによるPRL細胞の増殖を有意に抑制し、10-50μMの範囲で最大の増殖抑制効果が認められたので、今後50μMの濃度を使用することにした。 2. PD98059を使ってPRL細胞の基礎増殖率に対する効果を調べるとともに、細胞内cyclic AMP濃度を増加させるforskolinの最大増殖刺激効果がPD98059によって抑制されるかを調べた。PD98059は基礎増殖率に対しては全く影響を与えなかったが、インスリン200ng/mlによるPRL細胞の増殖をほぼ完全に抑制した。また、PD98059は1μMのforskolinによる増殖を約60%抑制した。 3. 成長因子の作用発現にcyclic AMP/protein kinase Aが関与している可能性も考えられたので、forskolinの作用を十分に抑制するH89、KT5720の濃度によってインスリンの増殖促進が抑制されるかを調べた。1μMのforskolinの増殖促進効果を、H89およびKT5720はそれぞれ1および0.5μMの濃度で抑制した。これらの濃度では、基礎増殖率は影響を受けなかったが、H89は5000ng/mlのインスリンによる増殖を56%、KT5720は58%抑制した。
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