プロラクチン産生(PRL)細胞においてcyclic AMPがMAP kinase cascadeを活性化するのか、また、その下流に存在すると考えられるcyclic AMP-response element binding protein(CREB)を活性化するのかを免疫組織化学的方法を用いて調べた。さらに、これらの蛋白のさらに下流に存在するp70S6kがPRL細胞の増殖調節に関与するかも調べた。 【研究結果】 1 MAP kinase cascadeの最終構成酵素であるMAP kinase(Erk 1)の活性化を見るために、この蛋白のリン酸化を識別する抗体を用いて、プロラクチンとの蛍光2重免疫染色を行った。リン酸化MAP kinase(pMAP kinase)はNew England BioLabs社の抗体を用い、Tyramide Signal Amplification法によって免疫染色した。培養下垂体前葉細胞には、PRL及びpMAP kinase免疫陽性細胞が認められたが、これらの細胞の数は、insulinあるいはinsulin-like growth factor-1投与によっても変化せず、さらにdibutyryl cyclic AMPやforskolin投与によっても影響を受けなかった。 2 MAP kinaseと同様の方法によって、リン酸化CREB(pCREB)の免疫染色を行った。PRL及びpCREB免疫陽性細胞の数は、dibutyryl cyclic AMP及びforskolin投与によって増加しただけではなく、insulin-like growth factor-1投与によっても増加した。 3 p70S6kの選択的阻害剤であるrapamycin投与は、insulinあるいはforskolinによるPRL細胞の増殖を抑制した。また、生理学的に重要なPRL細胞の増殖調節因子であるestradiolの増殖促進作用も抑制した。一方、PRL細胞の増殖を抑制するドーパミンアゴニストであるbromocriptine存在下では、rapamycinはinsulinによる増殖は抑制したが、forskolinによる増殖を抑制できなかった。
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